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新人司書のノロノロ日記

[読書記録]『幽遊菓庵 春寿堂の怪奇帳』~和菓子とあやかしが繋ぐ「縁」の物語~

和菓子✖ファンタジー

 こんにちは(#^.^#)

まだまだ始まったばかりのブログ。(しかも更新頻度は低め^_^;)3つめの記事は、本の紹介をさせていただこうかなと思います。

 

本日の紹介本は、

 

『幽遊菓庵 春寿堂の怪奇帳』真鍋 卓/著(KADOKAWA

 

です!! ライトノベルですね。

 

 高野山の麓にある「春寿堂」は、狐の妖怪・玉藻が営む和菓子屋さん。

あやかしが営む店とは知らず、就職にやってきてしまった青年・秋夜名月は、生まれつきあやかしが「見える」人だったんです。

 

名月はその体質故に、幼い頃から対人関係などで生きにくさを感じていたようです。

春寿堂で働こうと思ったのも、人間関係が最小限で済むし、そうすれば、見えてしまうあやかしたちにも悩まされないと思ったから。

 

しかし、そう思って行った先が、あやかしの経営する和菓子店だったのだから

驚きです。

 

愕然とする名月に店主・玉藻は交換条件を出してきます。

「3年間、店で働いてくれれば、あやかしが見えない体質にしてやろう」

これは、今まで悩まされてきた名月にとって何とも魅力的な提案です。

 

そんなこんなで、名月は働くことになったんですね。

 

さて、このお話には主人公・名月や、あやかしの玉藻など魅力的な人物とともに、

とても雅やかで素敵で、しかも美味しそうな和菓子たちがたくさん登場します。

 

和菓子って、日本の四季折々を表現しているものが多いですよね。

普段の生活の中でも、かすかな花の色のうつろいや、風の匂いで四季を感じることってあります。そんな暮らしの中に、ささやかな心を添えてくれるような素敵な慎ましさが、和菓子にはあると思います。

 

作中に登場する和菓子は様々です。

1番はじめに登場するのは「未開紅(みかいこう)」いうお菓子。

咲きかけの梅の花を表現したお菓子ですね。気になる方はぜひ検索してみてください。

 

玉藻に頼まれて、この「未開紅」をお客さんの元に届けにいった名月。

そこの庭には、一本の梅の木がありました。

その梅の木は、蕾はつくけど花が咲かないという、何とも不思議な木なのです。

しかし名月は、梅の木を見た途端、その理由が分かってしまいます。

 

木の下に佇む黒髪の女性……。

 

それは名月にしか見えない、この世の者ではない何か……。

その存在に気づいたことで、名月は呪われてしまいます。

 

このように、異質な体質から様々な出来事に巻き込まれてしまう名月ですが、

面白いのは、それを「縁」だという玉藻の言葉。

「縁」というのは、なんだか身近なようでも、いまいちよく分からない言葉です。

自分の本意に関わらず、生きていれば人は様々な物や人と「縁」で結ばれていきます。

「良縁」だったり「悪縁」だったり……。

私たちは、生きている限り「縁」と切り離されることはないのでしょう。

 

本書の面白いところは、まさしく「縁」を楽しむところにあると思います。

ストーリーを読み進めていくごとに、読者は自分となにかを結ぶ

不思議な「縁」の強さを感じていくでしょう。

 

玉藻と名月、かわいい式神のあずき、その他

多彩なキャラクターたちの掛け合いも、本書の読みどころです(#^.^#)

 

あやかし、和菓子、ファンタジー、どれか一つでもお好きな方には、

ぜひ手に取って欲しい作品です。

 

ここまでお読みいただき誠にありがとうございました!

 

皆様にも、素敵な本との「縁」がありますよう。